Archive|Nanoniele|MakiokaFufudo

 

[読みたい論文] アルコールを介するギ酸分解。遷移金属触媒は不要です。

Viewed: 16:24:23 in July 12, 2025

Posted: November 21, 2019

Transition‐Metal‐Free Acceptorless Decarbonylation of Formic Acid Enabled by a Liquid Chemical‐Looping Strategy (Imberdis, Arnaud; Lefèvre, Guillaume; Cantat, Thibault)
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (48), 17215−17219.

Keywords: formic acid; methyl formate; CO; MeOK; Cantat, Thibault; 有機化学; ブログ


遷移金属触媒を必要としないギ酸の分解反応について報告しているようです。形式的にはギ酸は一酸化炭素と水に分解される模様。遷移金属不要であることもですが、分解により二酸化炭素も水素も生成しないので一酸化炭素を簡単に取り出せるというのがこの論文の売り、ということでしょうか。

Graphical Abstractを見ると左下あたりに触媒サイクルがちっちゃく描かれています。これ、どんな触媒系なのかとSupporting Informationを見ると、カリウムメトキシド…ですか。不純物のチェックはしてあるとは思うんですが、というかまずはギ酸と酸−塩基反応起こしそうなやつですね。それと溶媒。DMF…え?N,N−ジメチルホルムアミド、ですよね。分解して一酸化炭素を放出するやつ。

カリウム化合物の不純物としてよく指摘されるパラジウムなどの遷移金属の存在やDMFの分解反応の可能性など、Angew. Chem. Int. Ed.に掲載されるからにはそれを否定する何かがなされていると信じたいですが、Supporting Informationを読み進めると…ネタばらしはやめときますNMPとか13とか。

でもやっぱり心配なので読みたい論文に追加です。

ちょっと待てGraphical Abstractではサイクル描いときながら別系でギ酸メチルを合成しとるんかいっ。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

きょうのどうぶつ

ここの画像を使用しています。

上目遣いの朝青龍。

 

計算終わりました

 

あわせてどうぞ

2019年の記事一覧
お仕事関係の記事のリストです(2019年)。

読みたい論文シリーズ− 2019年4Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2019年10〜12月)。

 

[読みたい論文] クロム触媒下で進む有機マグネシウムと酢酸ビニル等との交差カップリング
最近よく見かけるKnochelグループの論文の一つ。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (45), 18127−18135.

[読みたい論文] 飛ぶも飛ばないも光次第のジアゾニウム塩と有機金化合物の反応
触媒反応の中間体から反応機構を考察。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (47), 16988−16993.

[読みたい論文] 位置選択的・ジアステレオ選択的・エナンチオ選択的アルデヒドのアリル化
Buchwaldらが報告する銅触媒による反応です。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (47), 17074−17080.

[読みたい論文] 有機酸化剤と水しか要らないベンジルC−H結合切断反応…違うんかい
酸化剤の合成法の方が気になります。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (45), 17983−17988.

[読みたい論文] プロトン酸でルイス酸をブーストします
この化合物の描き難さときたら
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (47), 16889−16893.

[読みたい論文] テトラインの一発4閉環反応
始まりはSuzuki−Miyauraカップリング。
Org. Lett. 2019, 21 (21), 8652−8656.

Buchwaldらのグループが報告するアリルアルコール類の不斉γ-アミノ化
キラル銅触媒を使います。
Org. Lett. 2019, 21 (21), 8736−8739.

フッ素化された安息香酸のベンジルエステルを使用するマロン酸エステルのベンジル化
ニッケル触媒。オムスギャップ。
Org. Lett. 2019, 21 (21), 8837−8841.

ホスフィン触媒で進行するシクロプロペノンの環拡大反応
プロパルギルアルコールから始まるシクロペンテノン化合物の合成。
Org. Lett. 2019, 21 (21), 8695−8699.

[読みたい論文] ベンジルマンガンとヨウ化アルケニルの交差カップリング
Knochel教授の継続的な研究。
Org. Lett. 2019, 21 (21), 8684−8688.

 

注目のWebコンテンツ

学ぶの論文紹介2019年10月号(その他の論文編)
(有機化学を学ぶ人のブログ)
https://yuukiwomanabu.com/2019...

学ぶの論文紹介2019年10月号(合成・医薬系・チタン編)
(有機化学を学ぶ人のブログ)
https://yuukiwomanabu.com/2019...

学ぶの論文紹介2019年10月号(反応編)
(有機化学を学ぶ人のブログ)
https://yuukiwomanabu.com/2019...

おしゃぶりは
(村井君のブログ)
http://murai-kun.cocolog-nifty...

金ナノクラスター表面の自己組織化単分子膜を利用したテトラセンの高効率一重項分裂とエネルギー変換機能
(Chem-Station)
https://www.chem-station.com/b...

広栄化学 ウレタン硬化剤 臭気発生ない湿気硬化型
(化学工業日報)
https://www.chemicaldaily.co.j...

IHI、石炭火力向けアンモニア混焼 25年度商用化
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/artic...

全固体リチウム電池を応用した情報メモリ素子を開発:超低消費エネルギー化と多値記録化に初めて成功 省エネルギーコンピューティングに向けた大きな一歩
(東京工業大学)
https://www.titech.ac.jp/news/...
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の一杉太郎教授、清水亮太助教、渡邊佑紀大学院生(修士課程2年)らは、東京大学 大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻の渡邉聡教授らと共同で、全固体リチウム電池と類似した薄膜積層構造を持ち、超低消費エネルギーと多値記録を特徴とするメモリ素子の開発に成功しました…

分岐鎖アルコールによる細胞生育阻害の新たな分子メカニズムを発見 -窒素飢餓ストレス応答の制御による耐性獲得と バイオ燃料イソブタノール生産能の向上-
(京都大学)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/re...
黒田浩一 農学研究科准教授は、Gregory Stephanopoulos マサチューセッツ工科大学教授、Gerald R. Fink ホワイトヘッド医学生物学研究所教授、José L. Avalos プリンストン大学助教らと共同で、バイオエネルギーとして重要なイソブタノールなどの分岐鎖アルコール生産時に起こる細胞生育阻害の新たなメカニズムを発見しました…

天体衝突イベント由来の新たなエジェクタ層を中新世の深海堆積物から発見 約1,160万年前の生物大量絶滅イベントの原因解明か
(東京工業大学)
https://www.titech.ac.jp/news/...
国立研究開発法人 海洋研究開発機構(理事長 松永是)海洋機能利用部門 海底資源センターの野崎達生グループリーダー代理らは、国立大学法人 東京大学、国立大学法人 神戸大学、学校法人 千葉工業大学、国立大学法人 九州大学、国立大学法人 東京工業大学 理学院 地球惑星科学系の石川晃准教授、学校法人 早稲田大学と共同し、2014年10月に海洋地球研究船「みらい」を用いて南鳥島周辺で採取されたピストンコア試料(図1、2)を詳細に記載および分析した結果、中新世の深海堆積物に天体衝突イベント由来のエジェクタ層が含まれていることを明らかにしました…

胎盤を作る細胞を破壊した受精卵からウシ誕生~新しいウシ改良増殖技術への貢献に期待~
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...
本研究では,内部細胞塊と栄養外胚葉という二種類の細胞運命が決定済みである胚盤胞期の受精卵をマウスとウシで用意し,外側に位置する栄養外胚葉を人為的に取り除いた単離内部細胞塊の発生能力について調べました…

需要・供給・人口動態の視点から、家庭における炭素利用の変化要因を解明: 消費された木材・紙・プラスチックは、1210万トン分の二酸化炭素貯留に匹敵
(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japan...
1990年から2005年の間接CO2と商品中炭素の変化量を解析した結果、間接CO2については1995年、商品中炭素については2000年をピークに減少傾向にあり、家計の消費構造や商品の販路構成 (サプライチェーン) の変化がこれらの減少に貢献していたことが明らかになりました…

東北大学発ベンチャー起業支援プログラムの採択決定 PREP技術による金属合金粉末製造事業化案件など新たに6件を採択
(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japan...
本プログラムには、企業との共同研究を前提とする「重点」と、新技術の事業化検証から、実用段階にある技術の起業準備に至る幅広い段階に応じた支援が可能な「育成」があります。「重点」は、事業化に賛同するパートナー企業との共同申請による本格的な事業化検証プログラムとして、「育成」は、研究者の事業化意欲の積極的な発掘と支援拡大を視野にした支援プログラムとして実施しているものです…

需要・供給・人口動態の視点から、家庭における炭素利用の変化要因を解明:消費された木材・紙・プラスチックは、1210万トン分の二酸化炭素貯留に匹敵
(国立環境研究所)
http://www.nies.go.jp/whatsnew...
長崎大学総合生産科学域 (環境科学領域) の重富陽介准教授、東北大学の大野肇助教、福島康裕准教授、九州大学のAndrew Chapman准教授、藤井秀道准教授、国立環境研究所の南齋規介室長による共同研究グループは、日用消耗品や家財 (以下、商品) (ただし小売店等で配布されるビニール袋等の包装類は除く) が日本の消費者の手に渡るまでに間接的に排出された二酸化炭素 (以下、間接CO2) と、プラスチック樹脂や木材を原材料とする商品に含有されている炭素量 (以下、商品中炭素) の構造について解析を行いました …

【技術書レビュー】塗料の評価試験が上手くなる【ココからはじめる塗装】
(とある三十路研究職の書庫)
http://www.kohnomasaru.com/arc...

孤発性の筋萎縮性側索硬化症において極めて毒性の高いSOD1タンパク質を発見-神経難病の治療法開発に向けた新たなターゲットとして期待-
(慶應義塾大学)
https://www.keio.ac.jp/ja/pres...
SOD1タンパク質をコードするSOD1遺伝子に変異が生じるとALSが発症することは以前から知られていましたが、遺伝的な背景が明らかでない孤発性のALSにおいてもSOD1タンパク質が異常化し、病気の発症に関与していることが示唆されます…

室温で世界最高の導電率を示すナトリウムイオン伝導性硫化物固体電解質を開発―リチウムイオン電池を凌駕する次世代型全固体電池の実現に一歩前進―
(大阪府立大学)
https://www.osakafu-u.ac.jp/pr...
大阪府立大学大学院 工学研究科 林 晃敏 教授らのグループは、室温で非常に高いナトリウムイオン伝導性を示す硫化物固体電解質の作製に成功しました…

複雑な固体材料界面の電子・イオン状態の高精度シミュレーション手法を開発 〜全固体電池の電極—固体電解質ヘテロ固固界面の最適設計が加速〜
(物質・材料研究機構)
https://www.nims.go.jp/news/pr...
NIMSは、全固体電池などの蓄電固体デバイス内に存在する異なる材料間のヘテロ固固界面の電子・イオン状態を高精度・高効率に解析可能な計算手法の開発に成功しました…

液体の水を利用した光変調器の開発に世界で初めて成功 ~界面ポッケルス効果を用いた巨大光変調の実現~
(東京理科大学)
https://www.tus.ac.jp/mediarel...
ガラス基板上に透明電極を形成し、電解質水溶液に浸して、特定波長の白色光を電極と水の界面で全反射するように入射させ、対極との間に数ボルトの電圧を加えたところ、およそ50%もの光強度の変調が観測されました…

植物の細胞の中でのコミュニケーション - 葉緑体から核へのシグナル伝達に関わる制御因子の機能を解明 - 研究成果
(東京大学)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focu...
GUN1の機能解析に取り組み、GUN1がヘム合成酵素の活性を調節すること、またヘムと結合して、そのシグナル伝達を調節することを明らかにしました…

地上のチェレンコフ望遠鏡がガンマ線バーストの信号を初観測〜誕生直後のブラックホールから過去最高エネルギーのTeVガンマ線放射を確認〜
(東京大学)
http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/...
東京大学、京都大学、東海大学、ドイツ・マックスプランク物理学研究所 (MPP) などの国際共同研究チームは2019年1月14日、NASAのX線観測衛星Swiftやガンマ線観測衛星Fermiからの緊急連絡 (アラート) を受け、カナリア諸島ラパルマ島のチェレンコフ望遠鏡MAGIC で観測を開始しました…


学問・科学ランキング 科学ランキング 自然科学ランキング 化学ランキング