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[読みたい論文] ホスホニウム塩触媒で二酸化炭素をエポキシドを反応させます

Viewed: 04:42:53 in July 16, 2025

Posted: December 16, 2019

Methoxy Groups Increase Reactivity of Bifunctional Tetraarylphosphonium Salt Catalysts for Carbon Dioxide Fixation: A Mechanistic Study (Toda, Yasunori; Komiyama, Yutaka; Esaki, Hiroyoshi; Fukushima, Kazuaki; Suga, Hiroyuki)
J. Org. Chem. 2019, 84 (23), 15578−15589.

Keywords: TAPS; CO2; 読みたい論文シリーズ; 有機化学; ブログ


ホスホニウム塩触媒下でのエポキシドと二酸化炭素の反応に関する論文のようです。エポキシドと二酸化炭素の反応はこれまでに様々な系で試されており、例えば二酸化炭素が超臨界流体という条件下での反応など、高圧下の反応もあったりするのですが、この論文の反応では「風船」に入った二酸化炭素を使用しています。そしてGraphical Abstractにあるように反応温度は60℃。というわけで温和な条件下での反応を行えることが、この触媒の特徴と言えそうです。100℃未満云々と要旨テキストにもありますね。

Supporting Informationを見る限り、基質のエポキシドの種類は多くなく、有機合成よりは触媒の機能や反応機構の解明を志向した論文のような気がします。反応スキームの真ん中あたりにあるホスホニウム塩触媒にはOH基の水素やI、P+など反応に関与しそうなところが複数あります。それぞれが基質のエポキシドや二酸化炭素の炭素原子や酸素原子と、どの順番で接触して行くのか、本文中に書いてあると思いますので、読みたい論文に追加しました。

そして最大の関心は、電子供与性のメトキシ基が触媒活性にどう影響するのか。リン原子のカチオン性を弱めるはずなのになぜ触媒活性が上がるのか、もしかして「カウンターアニオン側」に効くのか、その辺りも確かめたいところです。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

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