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[読みたい論文] 呪文のような名前のスルホン酸系化合物を金属化合物を使うことなく合成します

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Posted: December 24, 2019

Additions to N‐Sulfinylamines as an Approach for the Metal‐free Synthesis of Sulfonimidamides: O‐Benzotriazolyl Sulfonimidates as Activated Intermediates (Bremerich, Maximilian; Conrads, Christian M.; Langletz, Tim; Bolm, Carsten)
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (52), 19014−19020.

Keywords: Ar; HOBt; Trt; N-methylpiperidine; Et3N; DMC; MeCN; Bolm, Carsten; 読みたい論文シリーズ; 有機化学; ブログ


金属化合物を反応に使用しないスルホニミダミドの合成に関するオープンアクセス論文です。金属フリーなのが論文のセールスポイントのようですが、アトムエコノミーを犠牲にした上でとならざるを得ないのが辛いところ。

スルホニミダミド(sulfonimidamide)、呪文みたいですが、ベースはスルホン酸(sulfonic acid/sulfonate)。スルホン酸にある2つのS=Oの一つがS=Nに、そしてスルホン酸のアミド(S–OがS–Nになっている)なのでsulfon/imid/amide、と。合成中間体であるベンゾトリアゾイルスルホニミダート(benzotriazolyl sulfonimidateのドイツ語読み)も、構造式と化合物群名との関係が想像できるかと。

実験結果については論文を読んだ方が早いのでここには書きませんが、アレーンジアゾニウム塩を使用するところはアリールカチオン等価体を発生させるために仕方なかったのかなあと本文を読むと、ん?ラジカル機構ですか。そこはMichaelis–Arbuzov反応の硫黄原子版というか、あれの反応様式で考えるのが簡単だと思ったのですが、なんでまたラジカルかいなと(単に私がラジカル反応嫌いというだけのことかもしれない)。類似の反応ですでにラジカル的な反応機構があるのかもしれないけど、本文中で文献を引用してましたっけ。

全体的にはふむふむと読めていける内容でしたが、反応機構のところだけはどうしても腑に落ちないので、後でじっくりと読みたいと思います.

内容と全然関係ないですが本文中の化合物番号にスペースが入ってるのが気になりました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

きょうのどうぶつ

ここの画像を使用しています。

ベビーキウイの木の匂いを嗅ぐイタチ。

 

計算終わりました

 

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Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (52), 18849−18853.

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