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[読みたい論文] アルケンのヒドロシリル化がカルシウム触媒下で進みます

Viewed: 02:35:03 in July 6, 2025

Posted: January 6, 2020

Regioselective Hydrosilylation of Olefins Catalyzed by a Molecular Calcium Hydride Cation (Schuhknecht, Danny; Spaniol, Thomas P.; Maron, Laurent; Okuda, Jun)
Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59 (1), 310−314.

Keywords: Ca; hydrosilylation; σ-bond metathesis; 読みたい論文シリーズ; Okuda, Jun; 有機化学; ブログ


カルシウム触媒下でのアルケンのヒドロシリル化反応に関するオープンアクセス論文のようです。カルシウム触媒、下のような少々複雑な構造なのがちょっとアレ。


アルカリ土類金属であるカルシウムが介するので、反応はσ結合メタセシスの組み合わせにより進行するのだと思います(本文の最後のあたりでも軽く触れています)。とするとこの反応、基質による反応が進む/進まないの違いが明確に現れるのではと思いつつ本文を読み進めましたが、やはりそのようで、きっちり線引きがなされる反応だなあという印象でした。反応させるアルケンが脂肪族基置換か芳香族基置換かで位置選択性が異なってくるのはまあそうだよねと、カルシウムヒドリドとアルケンの反応が鍵だよねと。

アルケンとトリヒドロシランと反応させるとジヒドロシランが生成するわけで、こいつが反応してしまう可能性はないのかなという疑問が湧いてくるかもsれないですが、そんな心配をしなくて済むのがσ結合メタセシスのいいところなんですよね。ところで触媒の構造はどうやって決めたか、そこいらあたりがまだ気になりますので、細かいところを読んでいきたいと思います。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

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真剣な眼差しのサバトラ。

 

計算終わりました

 

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