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[読みたい論文] フッ化アリールの芳香族求核置換反応を光と電気で進めます

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Posted: January 7, 2020

Electrophotocatalytic SNAr Reactions of Unactivated Aryl Fluorides at Ambient Temperature and Without Base (Huang, He; Lambert, Tristan H.)
Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59 (2), 658−662.

Keywords: SNAr; TBABF4; DCM; C; Pt; 読みたい論文シリーズ; Lambert, Tristan H.; 有機化学; ブログ


フッ化アリールの芳香族求核置換(SNAr)反応に関する論文のようです。ベンゼン環の炭素に対する求核置換は教科書的には起こりにくいとされていますが、実際のところやりようはいくらでもあるわけで、反応条件をきつくしたりとか、Pd触媒などを使ったりとか、多様な反応例が報告されています。この論文もその一つと言えますが、遷移金属も塩基も必要としないところが、この論文の反応のセールスポイントということなのでしょうか。

要旨テキストがあまりにも短いので論文の大まかなストーリーが把握しにくいのですが、Supporting InformationとGraphical Abstractから、有機触媒DDQと青色光、そして電気化学的手法を使うのはなんとなくわかります。小さな3ツ口フラスコが反応容器のようで、電極を豪快にぶっ刺したセプタムを取り付けて反応させるのが気前良くていいです(謎)。Amazonとはメーカー?それとも?

求核剤は酸素系と窒素系のものが試されていて適用範囲は広そうな印象ですが、フッ化アリール側がどうなのかなと。電子供与基が芳香環にくっついているフッ化アニシルとかしんどそうな気もします。その一方で電子求引基であるニトロ基がくっついたものよりも塩素原子がくっついているものの方が反応性が良いとか、どう考えたらいいのか悩むところも。


反応の様相はSupporting Informationでだいたい理解できました。どうしてもわからないのがフッ化アリールのフッ素原子と求核剤の水素原子の成れの果て。どこに行ってしまったのでしょうね。実験項に炭素電極は使い捨てにした方が良いとか書いてあるので、そこいら辺にヒントがあるのかも。本文を読まないことにはどうにもならないので、読みたい論文に追加です。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

きょうのどうぶつ

ここの画像を使用しています。

小顔短足のキジトラさん。

 

計算終わりました

 

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