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[化学系論文: 日本人著者の論文のシェア] 2017年版の集計が終わりました。

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Posted: December 11, 2018

独断と偏見でピックアップした150超の化学系学術雑誌に掲載された論文のうち、日本人著者のもののシェアを雑誌毎に調べました。

集計のためにチェックした論文の総数は約12万。

 

まずはトップ3から。

ピックアップした中で最もシェアの高い雑誌、化学の研究に携わる日本人には想像がつくと思われますが、Bull. Chem. Soc. Jpnでした。シェアは86.4%です。個人的にはもっと高い値を想像していましたが、確かに、日本人以外の研究者が書いた論文が昔よりも増えたかな、という印象です。海外に開かれてきたという点では、いいことなのかもしれません。

2番目にシェアの高い雑誌が、Chem. Lett.でした。79.4%。日本化学会が発行する、大雑把にはBull. Chem. Soc. Jpnがフルペーパー、Chem. Lett.が速報という位置づけの学術雑誌が、他の学術雑誌よりもシェアが高いという、納得の結果です。

3番目はChem. Rec. (23.2%)。Wiley系の雑誌ですが、これも日本化学会と関連があります。

というわけで、トップ3は日本化学系の雑誌となりました。

 

「メジャーどころ」でのシェアについて

化学系のといえばまずこれと言われる雑誌でのシェアを見ていきたいと思います。

Nature Chemistryでは12.0%。Communications Chemistryが創刊された2018年にはどうなるか、気になるところです。

Angew. Chem. Int. Ed.でほぼ10%。同じくWiley系のChem. Eur. J.では10.5%。

J. Am. Chem. Soc.では9.9%。Chem. Commun. (9.9%)でもほぼ同じですね。

新興Chemでのシェアは7.5%。

 

有機化学系の雑誌では…

有機化学系の雑誌でのシェアですが、最も高いのがAsian J. Org. Chem. (16.9%)です。総合系のChem. Asian J.もシェアが高く(20.2%)、地域的な理由があるのかもしれません。

Tetrahedron系で、速報を掲載するTetrahedron Lett.でのシェアは12.1%。フルペーパーを掲載するTetrahedronでは11.0%と、Tetrahedron Lett.での値よりも低め。Tetrahedron: Asymmetry、10.1%と有終の美を飾りました。

アメリカ化学会が発行する伝統的なJ. Org. Chem.では10.5%と10%超え。同速報誌Org. Lett.では11%台(11.7%)。Tetrahedron系と同様、速報誌の方が、シェアが高くなっています。

欧州系のEur. J. Org. Chem.では8.3%、Org. Biomol. Chem.が7.3%と米国系よりも低いです。

 

集計データについて

各雑誌におけるシェアを多い順にまとめたものがこちらです。

データの正確性には正直自信はありませんが、データを活用いただけましたら幸いです(データを利用した際には、URLなどのクレジット表示をお願いします)。

2017年の集計が終わりましたので、データが揃った雑誌から、2018年の集計を始めたいと思います。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

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