[今日描いた構造式] tris(trimethylsilyl)phosphine

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Posted: November 1, 2018

[Nanoscale 2018, 10 (6), 3014−3019] InPZnS alloy quantum dots with tris(hexylthio)phosphine as a dual anionic precursor (An, Soyeon; Cho, Hyelim; Jeon, Heung Bae; Kim, Sang-Wook)

Nanoscaleから。量子ドットに関する論文のようです。お水取りもできるリン源として使用しているのでしょうか。

tris(trimethylsilyl)phosphine (TMS3P)の3次元構造。


これと似た構造の分子に、tri(tert-butyl)phosphine (tBu3P)というものがあります。



構造の違いは、リン原子に結合しているのがケイ素原子か炭素原子か、です。ケイ素原子か炭素原子かで、結合長や結合角がどう違って来るのかを、DFT計算で調べました。

P(XMe3)3, XP−X bond length / ÅX−P−X bond angle / °
Si2.287106.3
C1.954107.5

結合長はTMS3Pの方が長いですね。ケイ素原子のサイズが炭素原子のものよりも大きいからでしょう。

結合角。これはtBu3Pの方が大きいです。つまり、tBu3Pの方がTMS3Pよりも分子の平面性が高い、ということになります。

ホスフィン化合物は均一系金属触媒の配位子としてしばしば使われ、触媒機能を微調整するために配位子の分子構造をチューニングしたり、たくさんあるホスフィンの中から特定のものがチョイスされたりするわけです。TMS3Pが金属触媒の配位子に選ばれるケースは極めて希と思いますが、リン原子に結合する元素の種類により、リン化合物の結合角も異なってくること、参考にしていただければ幸いです。

ついでなので、読みたい論文に追加です。

Keywords: tris(trimethylsilyl)phosphine; tri(tert-butyl)phosphine; QD

この記事を書いた人
「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

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