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[読みたい論文] Pd触媒下でシリルエノラートをアリール化します

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Posted: August 2, 2019

Palladium-Catalyzed α-Arylation of Carboxylic Acids and Secondary Amides via a Traceless Protecting Strategy (He, Zhi-Tao; Hartwig, John F.)
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (30), 11749−11753.

Keywords: Pd; ketene silyl acetal; PtBu3; LiHMDS; TMSCl; ZnF2; Hartwig, John F.


Hartwigらによる、Pd触媒下でのカルボン酸やカルボン酸アミドのアリール化について報告している論文のようです。α-炭素のところがアリール化されます。

Graphical Abstractにも描かれていますが、反応系中でカルボン酸とかとクロロトリメチルシランを反応させてケテンシリルアセタールとしています。これにより、カルボニル基のα炭素の求核性を露わにさせ、同時にカルボン酸のOHやアミドのNHをマスクしてこれらの部位がアリール化されるのを防いでいる、ということなのでしょうか。そしてケテンシリルアセタールに変換するためにLiHMDS塩基を必要とし、シリル基との作用によりケテンシリルアセタールを活性化するためにフッ化亜鉛を使用している、と、


とまあ目論見の結果反応容器にいろんな試薬が入り、系そのもの、そして実験操作も複雑になっています。様々な反応を開発してきているHartwigグループですが、この複雑さが弱点というか課題でもあります。

特定の有用な化合物の合成への応用例も本文に書かれているようなので、読みたい論文に追加です。

酢酸や酢酸アミドを基質にしていないのは、α-シリルカルボン酸が生成してしまうために望みの反応が進まないからなんじゃないかなと妄想。フッ化亜鉛が触媒。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

1955年はこんな年

人名反応など
Grob反応 [Doi 1]
ノーベル化学賞
硫黄を含む生体物質(特にオキシトシン、バソプレッシン)の構造決定と全合成
(Vincent du Vigneaud)
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「クラウン」発売(トヨタ自動車)
「ブルーバード」の源流「ダットサン・110」発売(日産自動車)
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日本住宅公団(都市再生機構)設立
墨田区花火問屋爆発事故
日本カーリット工場爆発事故
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初のトランジスタラジオ発売(東京通信工業=ソニー)
ベンザ発売(武田薬品工業)
日本が関税および貿易に関する一般協定(GATT)に正式加盟
「スズライト」発売(鈴木自動車工業)
料金前納式の公衆電話機を発売(日本電信電話公社=NTT)
高度経済成長の始期

 

きょうのどうぶつ

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モフモフアルパカちゃん。

 

計算終わりました

 

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