[読みたい論文] Tsuji-Trost型反応でリン原子を不斉中心にします

Viewed: 04:21:30 in December 11, 2019

Posted: September 12, 2019
[有機化学] [ブログ]

Desymmetrization of Phosphinic Acids via Pd-Catalyzed Asymmetric Allylic Alkylation: Rapid Access to P-Chiral Phosphinates (Trost, Barry M.; Spohr, Simon M.; Rolka, Alessa B.; Kalnmals, Christopher A.)
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (36), 14098−14103.

Keywords: Pd; dba; Tsuji−Trost reaction


上の反応スキームのように、不斉配位子と紫なPd触媒の存在下でホスフィン酸と1-ブロモシクロヘキセンを反応させ、ジアステレオ及びエナンチオ選択的にホスフィン酸シクロヘキセニルエステルを得る反応について報告している論文のようです。また、得られたホスフィン酸シクロヘキセニルエステルから光学活性ホスフィンオキシドを合成しています。

Pd触媒下でのアリルハライド(上の反応だと1-ブロモシクロヘキセン)と求核剤の反応、Tsuji−Trost反応として知られていますが、上の反応が狭義のTsuji−Trost反応と言い切る自信がないので、「型」を付けて逃げました。

不斉配位子の構造は下の通り。合成法は本文中にあるか、合成法を書いてある文献を引用しているのかと思われます。


反応スキームを見て「おや?」と15秒くらい考えたのが、基質のホスフィン酸。ぱっと見この基質自体、リン原子が光学活性中心になってるんじゃと勘違いしてました。確かに化学式上はそうなのですが、P−OHの水素原子が遊離とか移動とかしてP=OのところがP−OHになるの簡単だよなと。Supporting Informationを見たところ、確かに、反応に使われているホスフィン酸は1-ブロモシクロヘキセンに対して等モル使われていました。

というわけでこの反応では「2倍モル量の」ホスフィン酸の速度論的光学分割が行われているわけではなさそうです。んが、反応でのホスフィン酸の振る舞いを考えると、触媒サイクルの中で速度論的光学分割が行われている可能性はあるような気もしますし、そうでないかもしれません。この辺り、著者がどう解釈しているのか知りたいので、読みたい論文に追加です。

追伸 光学活性シクロヘキセニルアルコールのことも思い出してあげてください。

この記事を書いた人
「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

1984年はこんな年

人名反応など
Chan転位 [Doi 1]
Imamotoセリウム反応剤 [Doi 1]
Narasaka−Prasad還元 [Doi 1]
ノーベル化学賞
固相反応によるペプチド化学合成法の開発
(Robert Bruce Merrifield)
できごと
米アップルコンピュータがMacintoshを発表
「タカラ缶チューハイ」発売(宝酒造=宝ホールディングス)
植村直己がマッキンリー山の単独登頂に成功
「風の谷のナウシカ」公開
グリコ・森永事件
東京芝浦電気が東芝へ社名変更
プランタン銀座が開業
東洋工業がマツダへ社名変更
NHKが衛星放送を開始
第二電電(KDDI)設立
「8時だョ!全員集合」公開生放送中に停電
紙おむつ「メリーズ」発売(花王石鹸=花王)
「ビオレU」を発売(花王石鹸=花王)
投資ジャーナル事件
フィルムセンター火災
オーストラリアからコアラ
「北斗の拳」放映開始(フジテレビ)
住友製薬発足
新紙幣発行
「フライデー」創刊
キャプテンシステムのサービスを開始
エリマキトカゲ大流行
「名探偵ホームズ」放送開始

 

きょうのどうぶつ

ここの画像を使用しています。

アゴ乗せチャシロさん。

 

計算終わりました

 

あわせてどうぞ

SOHOのすすめ記事一覧 2019年
お仕事関係の記事のリストです(2019年)。

読みたい論文シリーズ− 2019年3Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2019年7〜9月)。

 

[読みたい論文] アリルスズのラジカル反応でエナミドを合成します
正直ラジカル反応は苦手です。
Org. Lett. 2019, 21 (17), 6589−6592.

[読みたい論文] 二酸化炭素をC1源にしてフッ化カルバモイルを合成します
DASTを使います。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (36), 12545−12548.

[読みたい論文] 3成分カップリング: ルイス塩基触媒下でのアルケンのスルフェノアセタール化
Prof. S. E. Denmark二連チャン。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (36), 12486−12490.

[読みたい論文] 3成分カップリング: ルイス塩基触媒下でのアルケンの不斉スルフェノアミノ化
セレンなのが気になります。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (35), 13767−13771.

[読みたい論文] Ni/Cu触媒下でのフッ化アロイル化合物からのアリールシラン合成
片割れの行方が気になる反応。
Chem. Commun. 2019, 55 (71), 10507−10510.

[読みたい論文] ベンゼンスルホン酸アミドのオルト位に直鎖アルキル基を導入します
直鎖というのが大事な気がする。
Chem. Commun. 2019, 55 (71), 10503−10506.

[読みたい論文] 電子の足りないリンが移動して3員環構造ができます
カルベンとかの教科書反応とは違う様式。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (34), 13336−13340.

[読みたい論文] スルホニウム塩で形式的芳香族求核置換反応
2つの異なる促進方法に共通点はあるのか?
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (34), 13346−13351.

[読みたい論文] 2種類のカルボン酸エステル「類」から非対称ケトンを合成します
でかいものにも試しています。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (35), 12081−12085.

[読みたい論文] 光照射で反応を変えるAu−Coナノ粒子触媒
タイトルでネタバレ。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (35), 12032−12036.

 

注目のWebコンテンツ

並列計算を活用した実時間最適制御の高速アルゴリズムを開発
(京都大学)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/re...
?ケ昊洋情報学研究科博士後期課程学生、大塚敏之同教授は、実時間最適制御(モデル予測制御)を並列計算によって実行する高速アルゴリズムの開発に成功しました。…

WTO上級委、 日本製バルブの関税で韓国への是正勧告支持
(化学業界の話題)
http://blog.knak.jp/2019/09/wt...

水素化ナトリウムは
(村井君のブログ)
http://murai-kun.cocolog-nifty...

「給餌フェロモン」を発見 −シデムシの母親は匂いで子の餌乞いを操る−
(京都大学)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/re...
高田守農学研究科・日本学術振興会特別研究員、森直樹農学研究科教授、三高雄希京都工芸繊維大学・日本学術振興会特別研究員、SandraSteigerバイロイト大学教授らの研究グループは、親が子育てを行うシデムシにおいて、給餌の直前に母親が分泌し、子の餌乞い行動を引き起こす「給餌フェロモン」という新しいフェロモンを世界で初めて発見しました。…

テラヘルツ光と高輝度放射光で見るファンデルワールス力 ―環境感受性を持つ生体適合性材料のデザインに新たな機軸を提供―
(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japan...
東北大学大学院農学研究科高橋まさえ准教授、理学研究科松井広志准教授、工学研究科鈴木誠名誉教授、森本展行准教授、および、高輝度光科学研究センター池本夕佳主幹研究員らの研究グループは、生体適合性材料である双性イオン分子※1において、温度や圧力などの環境への感受性をつかさどる弱いファンデルワールス力の発現を、テラヘルツ光※2と大型放射光施設SPring-8※3のBL43IRにおける高輝度放射光を用いた測定と高精度第一原理計算※4による理論解析をもとに明らかにしました。…

自然界で最小の励起エネルギーをもつ原子核状態の人工的生成に成功 −超精密「原子核時計」実現に大きく前進−
(産業技術総合研究所)
https://www.aist.go.jp/aist_j/...
自然界には約3300種以上の原子核が存在しますが、この中で最小の励起エネルギー(注1)をもつ原子核がトリウム229です。…

自然界で最小の励起エネルギーをもつ原子核状態の人工的生成に成功 −超精密「原子核時計」実現に大きく前進−
(理化学研究所)
http://www.riken.jp/pr/press/2...
岡山大学、産業技術総合研究所(産総研)、理化学研究所、大阪大学、京都大学、東北大学、ウィーン工科大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)の共同研究グループは、世界で初めてアイソマー状態を人工的に生成することに成功しました。…

細胞核の動的変形が核構造の再編成を引き起こすことを世界で初めて発見 〜夜行性の桿体細胞の核内構造は細胞核の動的変形によって昼行性型の核内構造から導かれる〜
(JST)
https://www.jst.go.jp/pr/annou...
JST戦略的創造研究推進事業において、広島大学大学院統合生命科学研究科の李聖林准教授と落合博講師らは、夜行性の哺乳類の桿体細胞注1)が持つクロマチンの空間構造形成に細胞核の動的変形が重要に関わることを解明しました。…

英議会閉鎖は違法、スコットランド裁判所
(化学業界の話題)
http://blog.knak.jp/2019/09/po...

有楽町マルイにて「AIタッチラリー」実証実験を実施 −店舗内の回遊行動と“体験した瞬間”の感情の履歴を捉え、新たな分析を実現−
(産業技術総合研究所)
https://www.aist.go.jp/aist_j/...
NEDOと産業技術総合研究所、(株)ABEJAは、(株)丸井グループと共同で、9月14日から9月16日まで、有楽町マルイにて「AIタッチラリー」実証実験を実施します。…

エチレン 弱含み推移
(化学工業日報)
https://www.chemicaldaily.co.j...

メタボリックシンドロームの予防対策に期待! ~ 砂糖の取り過ぎは肝臓脂質の代謝リズムの異常によって 中性脂肪をためやすくすることを解明 ~
(名古屋大学)
http://www.nagoya-u.ac.jp/abou...
名古屋大学大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授を中心とする研究グルー。…

有楽町マルイにて「AIタッチラリー」実証実験を実施 ―店舗内の回遊行動と“体験した瞬間”の感情の履歴を捉え、新たな分析を実現―
(NEDO)
https://www.nedo.go.jp/news/pr...
NEDOと産業技術総合研究所、(株)ABEJAは、(株)丸井グループと共同で、9月14日から9月16日まで、有楽町マルイにて「AIタッチラリー」実証実験を実施します。…

センサー・ロボットの活用による医療介護現場の負担軽減を目的とした IoT高齢者見守りの実現に向けたトライアル(産学官連携) -高齢者の“ゆるやかな見守り”による安心な住まいの実現へ-
(九州工業大学)
https://www.kyutech.ac.jp/what...
株式会社不動産中央情報センター(代表取締役社長:濱村美和以下、不動産中央情報センター)、国立大学法人九州工業大学(学長:尾家祐二以下、九州工業大学)、ドーナッツロボティクス株式会社(代表取締役社長:小野泰助以下、ドーナッツロボティクス)及び、西日本電信電話株式会社北九州支店(支店長:村上公幸以下、NTT西日本)、北九州市(市長:北橋健治)は、各種センサーやコミュニケーションロボットを活用し、医療介護現場が抱える課題の解決をサポートする、IoT高齢者見守りの実証トライアルを行います。…

国内最大規模の産学マッチングイベント「イノベーション・ジャパン2019」に出展
(岡山大学)
https://www.okayama-u.ac.jp/tp...
本学は8月29・30日、東京ビッグサイトで開催された国内最大規模の産学マッチングイベント「イノベーション・ジャパン2019〜大学見本市&ビジネスマッチング〜」に出展しました。…

 

注目の論文

[CrystEngComm 20190911065049, 2019, 35−5227]
Charge-transfer complexes of sulfur-rich acceptors derived from birhodanines
(Fan, Shuxiang; Kiyota, Yasuhiro; Iijima, Kodai; Ryo, Suho; Kawamoto, Tadashi; Gal, Yann Le; Lorcy, Dominique; Mori, Takehiko)
Tag: CTC, CT, S

[RSC Adv. 20190911065441, 2019, 47−27183]
Sarcoehrenbergilides D–F: cytotoxic cembrene diterpenoids from the soft coral Sarcophyton ehrenbergi
(Hegazy, Mohamed-Elamir F.; Mohamed, Tarik A.; Elshamy, Abdelsamed I.; Hamed, Ahmed R.; Ibrahim, Mahmoud A. A.; Ohta, Shinji; Umeyama, Akemi; Paré, Paul W.; Efferth, Thomas)

電気化学キャパシタ  
[RSC Adv. 20190911070158, 2019, 47−27602]
Study of the pore structure and size effects on the electrochemical capacitor behaviors of porous carbon/quinone derivative hybrids
(Itoi, Hiroyuki; Tazawa, Shuka; Hasegawa, Hideyuki; Tanabe, Yuichiro; Iwata, Hiroyuki; Ohzawa, Yoshimi)
Tag: C, EC, EC

[Ind. Eng. Chem. Res. 20190911070615, 2019, 35−15958]
Syntheses of Aromatic/Heterocyclic Derived Bioplastics with High Thermal/Mechanical Performance
(Ali, Mohammad Asif; Kaneko, Tatsuo)
Tag: cin, IA, C, Het, M

[Environ. Sci. Technol. 20190911070938, 2019, 17−10034]
A Significant Portion of Water-Soluble Organic Matter in Fresh Biomass Burning Particles Does Not Contribute to Hygroscopic Growth: An Application of Polarity Segregation by 1-Octanol–Water Partitioning Method
(Chen, Jing; Lee, Wen-Chien; Itoh, Masayuki; Kuwata, Mikinori)
Tag: TDMA, TOF, OM, Mat, PMF, DMA, log P, ACSM, SOM, WSOM, HTDMA

[Environ. Sci. Technol. 20190911071745, 2019, 17−10514]
The Year-Long Development of Microorganisms in Uncompacted Bavarian Bentonite Slurries at 30 and 60 °C
(Matschiavelli, Nicole; Kluge, Sindy; Podlech, Carolin; Standhaft, Daniel; Grathoff, Georg; Ikeda-Ohno, Atsushi; Warr, Laurence N.; Chukharkina, Alexandra; Arnold, Thuro; Cherkouk, Andrea)
Tag: TD, HLW, OAc, A, H, H2S