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[読みたい論文] Tsuji-Trost型反応でリン原子を不斉中心にします

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Posted: September 12, 2019
[有機化学] [ブログ]

Desymmetrization of Phosphinic Acids via Pd-Catalyzed Asymmetric Allylic Alkylation: Rapid Access to P-Chiral Phosphinates (Trost, Barry M.; Spohr, Simon M.; Rolka, Alessa B.; Kalnmals, Christopher A.)
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (36), 14098−14103.

Keywords: Pd; dba; Tsuji−Trost reaction; Kalnmals, Christopher A.


上の反応スキームのように、不斉配位子と紫なPd触媒の存在下でホスフィン酸と1-ブロモシクロヘキセンを反応させ、ジアステレオ及びエナンチオ選択的にホスフィン酸シクロヘキセニルエステルを得る反応について報告している論文のようです。また、得られたホスフィン酸シクロヘキセニルエステルから光学活性ホスフィンオキシドを合成しています。

Pd触媒下でのアリルハライド(上の反応だと1-ブロモシクロヘキセン)と求核剤の反応、Tsuji−Trost反応として知られていますが、上の反応が狭義のTsuji−Trost反応と言い切る自信がないので、「型」を付けて逃げました。

不斉配位子の構造は下の通り。合成法は本文中にあるか、合成法を書いてある文献を引用しているのかと思われます。


反応スキームを見て「おや?」と15秒くらい考えたのが、基質のホスフィン酸。ぱっと見この基質自体、リン原子が光学活性中心になってるんじゃと勘違いしてました。確かに化学式上はそうなのですが、P−OHの水素原子が遊離とか移動とかしてP=OのところがP−OHになるの簡単だよなと。Supporting Informationを見たところ、確かに、反応に使われているホスフィン酸は1-ブロモシクロヘキセンに対して等モル使われていました。

というわけでこの反応では「2倍モル量の」ホスフィン酸の速度論的光学分割が行われているわけではなさそうです。んが、反応でのホスフィン酸の振る舞いを考えると、触媒サイクルの中で速度論的光学分割が行われている可能性はあるような気もしますし、そうでないかもしれません。この辺り、著者がどう解釈しているのか知りたいので、読みたい論文に追加です。

追伸 光学活性シクロヘキセニルアルコールのことも思い出してあげてください。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

1984年はこんな年

人名反応など
Chan転位 [Doi 1]
Imamotoセリウム反応剤 [Doi 1]
Narasaka−Prasad還元 [Doi 1]
ノーベル化学賞
固相反応によるペプチド化学合成法の開発
(Robert Bruce Merrifield)
できごと
米アップルコンピュータがMacintoshを発表
「タカラ缶チューハイ」発売(宝酒造=宝ホールディングス)
植村直己がマッキンリー山の単独登頂に成功
「風の谷のナウシカ」公開
グリコ・森永事件
東京芝浦電気が東芝へ社名変更
プランタン銀座が開業
東洋工業がマツダへ社名変更
NHKが衛星放送を開始
第二電電(KDDI)設立
「8時だョ!全員集合」公開生放送中に停電
紙おむつ「メリーズ」発売(花王石鹸=花王)
「ビオレU」を発売(花王石鹸=花王)
投資ジャーナル事件
フィルムセンター火災
オーストラリアからコアラ
「北斗の拳」放映開始(フジテレビ)
住友製薬発足
新紙幣発行
「フライデー」創刊
キャプテンシステムのサービスを開始
エリマキトカゲ大流行
「名探偵ホームズ」放送開始

 

きょうのどうぶつ

ここの画像を使用しています。

アゴ乗せチャシロさん。

 

計算終わりました

 

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