[読みたい論文] 水素で水素化: リチウム存在下で進行します。
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Posted: February 12, 2019
[Chem. Eur. J. 2019, 25 (8), 1918−1922] H2 Activation by Non-Transition-Metal Systems: Hydrogenation of Aldimines and Ketimines with LiN(SiMe3)2 (Elliott, Daniel C.; Marti, Alex; Mauleón, Pablo; Pfaltz, Andreas)
昨年
LiAlH4「触媒」による、H2を水素源とするイミンの水素化の論文を紹介しましたが、ついにというかやはりというか、リチウム化合物存在下での水素化が報告されました。
使用するリチウムは
LiHMDS。有機合成反応では主に塩基として使用される化合物ですね。
反応にかなりの制限がありそうで、その辺りのことを知りたいので、読みたい論文に追加です。いつもは反応機構を知りがる私ですが、この論文のは大体察しがつきます。σ結合メタセシス。
リチウム金属て、有機化学の分野では有機リチウム反応剤や
LDAなどの塩基の構成元素としてよく知られているのですが、ヒドロシランや水素などと妙ちくりんな反応をしたりするんですよね。1940年代のGilmanの論文とかで、有機リチウムがヒドロシランのケイ素−水素結合やケイ素−炭素結合を切断しているのが、昔から知られていたりします。「ソフトな」d-ブロック遷移金属触媒の研究と比べて、リチウムなどの「ハードな」前周期金属の素反応などはあまり目立ちませんが、深掘りすれば色々見つけられそうな気がしています。リチウム、希土類、カルシウムあたりで共通しそうな反応を探していくといいんじゃないかな、と。
TONの低いこの論文の反応、使用するLiHMDSのモル量はもっと少なくできると思うのですが、なんでこんなにたくさん使ってるのでしょうね。ちょっと気になります。
Keywords: LiHMDS; LDA; LAH; TON; Pfaltz, Andreas
「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。
専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

別府で見かけた黒い猫。
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