[読みたい論文] 4-methyl-2-(triphenylmethyl)-1,2-thiaphosphetane
Viewed: 10:33:07 in July 2, 2025
Posted: February 1, 2019
[Chem. Commun. 2019, 55 (11), 1615−1618] Synthesis of free and ligated 1,2-thiaphosphetanes — expanding the pool of strained P-ligands (Kyri, Andreas Wolfgang; Gleim, Florian; Becker, David; Schnakenburg, Gregor; Espinosa Ferao, Arturo; Streubel, Rainer)
4員環の、しかもリン−硫黄結合を持つ化合物の合成。リン原子の非共有電子対が「フリー」のものを合成できたのは、この論文が初めてのようです。
合成は2段階。1段目はプロピレンスルフィドを使う環拡大反応。ここでリン−硫黄結合が形成されます。金属の種類はCr, Mo, Wで、金属の種類により収率が異なるようですが、収率の差が金属に由来するのか、単純に技能の問題なのかは、論文本体に目を通さないとわからないです(目を通してもわからないかも)。なお、1段目の生成物はジアステレオマー混合物として、2段目の反応に使用しているようです。
2段目のDPPEは、1,2-bis(diphenylphosphino)ethaneですね。金属原子への配位力の強さを使って、1,2-thiaphosphetaneからモリブデンを離しています。ターゲットの生成物はラセミ混合物ですが、1段目で使ったプロピレンスルフィドがラセミ混合物なので、当然といえば当然ではあります。光学純度の高いプロピレンスルフィドを使うとどうなるかは、今後の検討になるのでしょう。
1,2-thiaphosphetane構造が気になります。4員環構造の歪みが化合物をより不安定にするのか、リン−硫黄結合の長さが歪みを緩和するのか、その辺りのことを知りたいので、読みたい論文に追加です。
Keywords: 4-methyl-2-(triphenylmethyl)-1,2-thiaphosphetane; 12-crown-4; propyrene sulfide; DPPE; Streubel, Rainer
「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。
専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

2月一番最初にやってきたのは、タヌキ。プランターを荒らしまくって行きました。雨上がりなので毛が濡れています。
あわせてどうぞ
2019年の記事一覧お仕事関係の記事のリストです(2019年)。
読みたい論文シリーズ − 2019年1Q読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2019年1〜3月)。
[読みたい論文] 硫化物イオンは水中では存在しない?ないことを証明するのは難しい。
Chem. Commun. 2018,
54 (16), 1980−1983.
[読みたい論文] イソプロピルアルコールでハロゲン化アリールを還元触媒も塩基も不要。紫外光使います。
Chem. Commun. 2019,
55 (6), 767−770.
[読みたい論文] 有機セリウムで無触媒炭素−炭素結合形成塩化セリウム/有機リチウムといえばImamoto reagentですよね。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019,
58 (4), 1188−1192.
[読みたい論文] リン−ホウ素系6員環frustrated Lewis pairこの浮気者〜!。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019,
58 (3), 882−886.
[今日描いた構造式] tris(2,6-difluorophenyl)boraneFLPでアミドを還元的に水素化。
J. Am. Chem. Soc. 2019,
141 (1), 159−162.
[今日描いた構造式] 3-(4-(trifluoromethyl)phenyl)pyridineアリール−アリールカップリング。
J. Am. Chem. Soc. 2018,
140 (51), 17851−17856.
[今日描いた構造式] 2-phenyl-4,5,6,7-tetrahydro-1,3-oxazepine開環重合のモノマー。
J. Am. Chem. Soc. 2018,
140 (50), 17404−17408.
[今日描いた構造式] ジシレン化合物ケイ素−ケイ素二重結合、しかもケイ素原子は2価。
J. Am. Chem. Soc. 2018,
140 (49), 16962−16966.
[今日描いた構造式] N-(phenylthio)phthalimideフェニルチオ源として不斉反応に。
J. Am. Chem. Soc. 2018,
140 (46), 15621−15625.
[今日描いた構造式] benzo[de]chromene1-ナフトールとアルキンから。
Chem. Commun. 2018,
54 (91), 12879−12882.
[今日描いた構造式] hitoyopodin Aベンゾビシクロ[3.2.1]オクタン骨格を持つ天然化合物。