[読みたい論文] 4-methyl-2-(triphenylmethyl)-1,2-thiaphosphetane

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Posted: February 1, 2019

[Chem. Commun. 2019, 55 (11), 1615−1618] Synthesis of free and ligated 1,2-thiaphosphetanes — expanding the pool of strained P-ligands (Kyri, Andreas Wolfgang; Gleim, Florian; Becker, David; Schnakenburg, Gregor; Espinosa Ferao, Arturo; Streubel, Rainer)

4員環の、しかもリン−硫黄結合を持つ化合物の合成。リン原子の非共有電子対が「フリー」のものを合成できたのは、この論文が初めてのようです。

合成は2段階。1段目はプロピレンスルフィドを使う環拡大反応。ここでリン−硫黄結合が形成されます。金属の種類はCr, Mo, Wで、金属の種類により収率が異なるようですが、収率の差が金属に由来するのか、単純に技能の問題なのかは、論文本体に目を通さないとわからないです(目を通してもわからないかも)。なお、1段目の生成物はジアステレオマー混合物として、2段目の反応に使用しているようです。



2段目のDPPEは、1,2-bis(diphenylphosphino)ethaneですね。金属原子への配位力の強さを使って、1,2-thiaphosphetaneからモリブデンを離しています。ターゲットの生成物はラセミ混合物ですが、1段目で使ったプロピレンスルフィドがラセミ混合物なので、当然といえば当然ではあります。光学純度の高いプロピレンスルフィドを使うとどうなるかは、今後の検討になるのでしょう。

1,2-thiaphosphetane構造が気になります。4員環構造の歪みが化合物をより不安定にするのか、リン−硫黄結合の長さが歪みを緩和するのか、その辺りのことを知りたいので、読みたい論文に追加です。

Keywords: 4-methyl-2-(triphenylmethyl)-1,2-thiaphosphetane; 12-crown-4; propyrene sulfide; DPPE

この記事を書いた人
「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

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