[化学系論文] JOCでの日本人シェアを調べました−初巻から2018年の巻まで

Viewed: 13:40:59 in December 16, 2019

Posted: February 19, 2019

(2018年版の主要雑誌の集計結果はこちら)

アメリカ化学会の有機化学系学術雑誌J. Org. Chem.での日本人論文のシェアについて、1936年(初巻)から2018年まで調べました。

適当に調べたので、信頼度も適当ということで…。

数字だけを見たい方には、こちらがオススメです。

 

ざっくりコメント

J. Org. Chem. (JOC)は1936年に初巻が発行されましたが、日本人著者の論文が継続的に掲載されるようになったのは1950年代からです。1950年代以降、日本人著者の論文のシェアは少しずつ増加していき、2000年にピークを迎えます。その後、2018年まで下落していきます。


上の図には比較のためにJ. Am. Chem. Soc. (JACS)でのシェアの推移もあわせてプロットしています。1950年代まではJACSの方がシェアが高いのですが、1960年代から1990年代にかけては、JOCの方が高くなっています。一方、21世紀に入ってからは、JOCでのシェアの方がJACSでのものよりも低くなっています。JOCの方がシェアのピークが早くやってきているということなのかもしれません。

JOCとJACSでシェアの推移が異なる点についてはいくつかの理由が頭には浮かびます。例えば、20世紀の有機化学は新反応や新規化合物などの純粋なものがメインであり、先進国、特に日本で行われていた有機化学の基礎研究の成果が数多くの論文となったこと。一方21世紀には材料科学などの応用寄り、複合分野での研究が活発化し、そこでは新興国勢も競争に加わっていること。そういった背景や研究のトレンドが、JOCでの日本人論文のシェアの早いピークとして現れているのではと妄想しています。

そしてもう一つ考えられるのがOrg. Lett.の発行。より早い成果発表が可能なこの雑誌に、日本勢がシフトしている可能性もあるのではと思っています(この記事を書いている時点で、Org. Lett.について集計中)。

 

論文数の推移は?


JACSの年毎の論文数が徐々に増加しているのと比べると、JOCの論文数の1960年代以降の増加は緩やかです。ただし、前述の通り、1999年のOrg. Lett.の発行を考えると、有機化学系の論文数は21世紀に入ってから増加していると言えるのかもしれません。

この記事を書いた人
「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

あわせてどうぞ

SOHOのすすめ記事一覧 2019年
お仕事関係の記事のリストです(2019年)。

読みたい論文シリーズ − 2019年1Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2019年1〜3月)。

 

[読みたい論文] ランタン触媒下でのエステルのピナコールボラン還元
1〜3族の金属の性質をうまく使った触媒反応です。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (8), 2505−2509.

[読みたい論文] アンチモンでC−H結合活性化
親電子置換型でしょうか。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (8), 2241−2245.

[読みたい論文] 水素で水素化: リチウム存在下で進行します。
ここまできたけどTONが。
Chem. Eur. J. 2019, 25 (8), 1918−1922.

[読みたい論文] 無駄のない1,3-ジケトンのアルキル化
シンプルなのが実に良い。
Org. Lett. 2019, 21 (3), 741−744.

[読みたい論文] 単純ではなさそうなヨウ化アリールとアルデヒドの反応
タイトルを二度見したNHK型反応。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (5), 1828−1832.

[読みたい論文] 硫黄でカルボン酸が6量化
色々脱離しまくってます。
Org. Lett. 2019, 21 (1), 279−282.

[化学系論文] JACSでの日本人シェアを調べました—初巻から2018年の巻まで
全部調べました。

[読みたい論文] 第4436回最強有機触媒決定戦
イヤッホーイ!
J. Org. Chem. 2019, 84 (3), 1126−1138.

[今日描いた構造式] tert-Butyl perbenzoate
鉄触媒下でのHeck型反応の酸化剤か開始剤か
Org. Lett. 2019, 21 (3), 776−779.

アメリカ化学会の論文を読もうとしたら、中国のサーバに飛ばされた
一体何が起こっているのだろう。

[読みたい論文] 4-methyl-2-(triphenylmethyl)-1,2-thiaphosphetane
歪に良く耐えた。感動(以下略
Chem. Commun. 2019, 55 (11), 1615−1618.

[読みたい論文] 硫化物イオンは水中では存在しない?
ないことを証明するのは難しい。
Chem. Commun. 2018, 54 (16), 1980−1983.

[化学系論文] JACSでの日本人シェアを調べました—平成編
出来事とあわせて見ていくと…?

[読みたい論文] イソプロピルアルコールでハロゲン化アリールを還元
触媒も塩基も不要。紫外光使います。
Chem. Commun. 2019, 55 (6), 767−770.

[読みたい論文] 有機セリウムで無触媒炭素−炭素結合形成
塩化セリウム/有機リチウムといえばImamoto reagentですよね。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (4), 1188−1192.

[読みたい論文] リン−ホウ素系6員環frustrated Lewis pair
この浮気者〜!。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (3), 882−886.

[今日描いた構造式] tris(2,6-difluorophenyl)borane
FLPでアミドを還元的に水素化。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (1), 159−162.

[今日描いた構造式] 3-(4-(trifluoromethyl)phenyl)pyridine
アリール−アリールカップリング。
J. Am. Chem. Soc. 2018, 140 (51), 17851−17856.

[化学系論文] 日本人著者の論文のシェア 2018年版
2017年のデータと比較しました。

[今日描いた構造式] 2-phenyl-4,5,6,7-tetrahydro-1,3-oxazepine
開環重合のモノマー。
J. Am. Chem. Soc. 2018, 140 (50), 17404−17408.

[研究室での事件] 結晶化の苦労を台無しにする輩
伝え聞いた話です。