[化学系論文] JOCでの日本人シェアを調べました−初巻から2018年の巻まで
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Posted: February 19, 2019
(2018年版の主要雑誌の集計結果はこちら)
アメリカ化学会の有機化学系学術雑誌
J. Org. Chem.での日本人論文のシェアについて、1936年(初巻)から2018年まで調べました。
適当に調べたので、信頼度も適当ということで…。
数字だけを見たい方には、
こちらがオススメです。
J. Org. Chem. (JOC)は1936年に初巻が発行されましたが、日本人著者の論文が継続的に掲載されるようになったのは1950年代からです。1950年代以降、日本人著者の論文のシェアは少しずつ増加していき、2000年にピークを迎えます。その後、2018年まで下落していきます。
上の図には比較のためにJ. Am. Chem. Soc. (JACS)でのシェアの推移もあわせてプロットしています。1950年代まではJACSの方がシェアが高いのですが、1960年代から1990年代にかけては、JOCの方が高くなっています。一方、21世紀に入ってからは、JOCでのシェアの方がJACSでのものよりも低くなっています。JOCの方がシェアのピークが早くやってきているということなのかもしれません。
JOCとJACSでシェアの推移が異なる点についてはいくつかの理由が頭には浮かびます。例えば、20世紀の有機化学は新反応や新規化合物などの純粋なものがメインであり、先進国、特に日本で行われていた有機化学の基礎研究の成果が数多くの論文となったこと。一方21世紀には材料科学などの応用寄り、複合分野での研究が活発化し、そこでは新興国勢も競争に加わっていること。そういった背景や研究のトレンドが、JOCでの日本人論文のシェアの早いピークとして現れているのではと妄想しています。
そしてもう一つ考えられるのがOrg. Lett.の発行。より早い成果発表が可能なこの雑誌に、日本勢がシフトしている可能性もあるのではと思っています(この記事を書いている時点で、Org. Lett.について集計中)。
JACSの年毎の論文数が徐々に増加しているのと比べると、JOCの論文数の1960年代以降の増加は緩やかです。ただし、前述の通り、1999年のOrg. Lett.の発行を考えると、有機化学系の論文数は21世紀に入ってから増加していると言えるのかもしれません。
「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。
専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。
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